多くのSNSが時系列表示から、アルゴリズムによる優先表示に変わってから随分経つ。僕は以下の前提で個人制作と発信を続けてきた。
シンプルな暮らしと豊かな創作を両立させること。
SNSで消耗せず、自分のペースで成果を積み上げること。
この二つは背反しているように見える。
小手先の対策など効かないほど、ビッグテックの設計は強力だ。それでも今のところ、いくつかの単純な工夫が効いている。
一つは、スマホにアプリを入れないこと。僕のiPhoneには、Xも、Instagramも、YouTubeも入っていない。必要なときにダウンロードするが、実際に入れるのはInstagramだけだ。ストーリーズがアプリからしか投稿できないから。それ以外は全部ブラウザで済んでしまう。メッセージ機能などは、むしろブラウザのほうが使いやすい。
もう一つは、画面をグレースケールにすること。白黒にするだけで、スマホを見る時間そのものが減った。
この二つを始めてから、SNSの使用時間だけでなく、スマホの使用時間が大きく減った。
なぜ今Xなのか
他人の投稿を見れば消耗する。それはXでも変わらない。ただプロダクトとして見ると、Xは他のSNSと明らかに違う。対話型のAIを本体に組み込んでいるSNSは、今のところXしかない。投稿がそのまま学習の材料になっていく構造になっている。決済が入ってスーパーアプリになるとも言われているが、そこは予測できない。
収益化の仕組みも変わる。Xは8月7日に新しい制度を発表し、従来の収益分配プログラムは新規受付を終了した。既存の参加者が収益を得られるのは9月7日まで。9月8日から新制度への申請が始まる。
新制度の条件を見ると、意図がはっきりわかる。転載やわずかな加工だけのコンテンツは対象外になり、既存の素材を使うなら自分の分析や文脈を加えることが求められる。他人のコンテンツで表示回数を稼いでいたアカウントは稼ぎにくくなる。文章を書く人間にとっては、これは追い風だ。
ちょうど今週、面白いことも起きた。Operation Bluebirdという会社が「Twitter.now」というSNSを公開した。元Twitterの商標担当弁護士が創業者にいる。イーロン・マスクがXに改名した時点でTwitterという商標は放棄された、というのが彼らの主張だ。裁判はまだ続いていて、ユーザーはまだ数百人しかいない。僕はハンドルだけ取得したが、使用はしない。
ただ、この件は一つのことを示している。「Twitter」という名前ですら、誰のものかが法廷で争われている。プラットフォームの名前は借り物で、その条件を自分では決められないということ。
Xにもう少しコミットしてみようと思ったのは、noteの更新をやめたから。日本語で一般向けの長文を置く場所を、XのArticle機能に移すイメージが沸いた。今年から月額プランで誰でもこの長文機能を使えるようになり、書いた記事はプロフィールに蓄積されていく。
そのうえで、本丸は変えない。長文はEmacsで書いてCoreに置き、週に一度Lettersで配信する。Xに置くのは、すでに公開したYouTubeの内容を記事にしたものだけだ。X用に新しく書き下ろすことはしない。Xは配布のための場所であって、資産ではない。
アルゴリズムの中身
Xのアルゴリズムは、これまで「らしい」で語られてきた。それが今年、読めるものになった。1月に公開され、8月13日に、点数の付け方の実際の数値まで公開された。
計算式は拍子抜けするほど単純だ。ある投稿を誰かに見せるかどうかは、「その人がその投稿にどう反応しそうか」を行動ごとに予測して、それぞれに決められた点数を掛けて、足し合わせて決まる。
ここが誤解されやすいところで、点数が掛かるのは「その投稿がすでにもらったいいねの数」ではない。「この人がいいねしそうか」という予測に掛かる。だから同じ投稿でも、人によって評価が違う。
その点数は以下の通り。
リンクをコピーして共有する 20.0
リプライ 5.0
引用・DMで送ること 5.0
リポスト 1.0
いいね 0.5
投稿をクリックする 0.4
リンクを開く 0.2
リプライすることはハートをつけることの10倍。最もインプレッションの拡大に貢献するのはリンクをコピーして共有することで、これはハートの40倍の威力がある。
読み方をまとめると、Xが最も高く評価しているのは、誰かに送りたくなる投稿かどうかだ。いいねを集めることではない。文章を書く人間にとって、これは有利な設計だと思う。
Log
・Editions / Tokimaru Tanakaの書物
・最近の読書:『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール(Amazonアフィリエイトリンクを使用しています)
・今週のPodcast: 組織思考の人は損をする


